有名な物理学者である、ア インシュタイン博士の言葉に 「無限であるものが2つあり ます。宇宙と人間の愚かさ。 ただし宇宙については確証が ありません」というものがあ ります。一見ユーモアを感じ させる言葉ですが、博士が 「人間の愚かさが限りない」 と断言していることにも気付 かされます。 私は不思議に思いました。 なぜ天才と称される博士が、 人間の愚かさが無限であると 言い切られたのでしょうか。 その手がかりとなる、ある出 来事があります。1949 年、アメリカで研究していた 日本人初のノーベル賞受賞者 ・湯川秀樹さんのもとを、ア インシュタイン博士が突然訪 ねました。湯川さんが驚く 中、博士は部屋に入るなり彼 の手を強く握り、大粒の涙を 流しながら頭を下げました。 「原子力爆弾は、罪なき人々 を傷つけてしまった。こんな 私を、どうか許してほしい」 博士が歳で発表した相対性 理論は、あらゆる物質に膨大 なエネルギーが秘められるこ とを示し、その後の研究でウ ランなどからエネルギーを取 り出す「原子力」が確立され ました。 しかし、その原子力が真っ 先に、何に用いられたのか は、誰もが知るところです。 博士が歳の時、1945年 8月6日、この日人類史上初 めて原子力爆弾が、人々が生 活を営んでいる広島市へ投下 され、同年8月9日には長崎 市へと、2度の投下がなされ ます。大勢の人がその爆弾で 焼かれ、命を落としました。 (今でもその被害に苦しむ人 がいます)博士はその事実に 深く心を痛めました。 博士のいう「人間の愚か さ」とは、「自分で善い行い だと思っていたのに、その行 いが、時に人を傷つける結果 を引き起こす。本当の意味で の善行が分かりえない自分自 身」を指していたのかもしれ ません。 広島市の爆弾投下地点には 現在平和記念公園が建てら れ、公園内は「悲願の鐘」と いう平和を願う鐘が設置され ています。そこには2つの言 葉が刻まれています。一つは デルフォイの神託「自己を知 れ」。もう一つは『仏説無量 寿経』に説かれる阿弥陀如来 さまの願いです。 阿弥陀さまは「善い行いを 続けられず、時に人を傷つけ てしまう」そんな私のために 願いを建てられた仏さまで す。 そして、阿弥陀さまの願い は願いのまま終わるのではな く、実際に私を「救うはたら き」となって届けられま す。そのおはたらきが南 無阿弥陀仏のお念仏の響 きなのであります。 言おうとすれば何度で も、思おうとおもえば何 度でもそんな今の私に響 くお念仏は、「善い行い をしていけず、傷ついて いくあなただからこそ、 この阿弥陀があなたと一 緒になって、仏の子とし て生きていってね。そし てあなたが浄土に生まれ 往くその時は、人も安ら かにしていける仏に必ず 無限であるものが2つ 百人一首の読み札・取り 札が現代語で表記されてい れば、情感あふれる歌の内 容や優美な貴人の姿を気軽 に楽しむことができます。 しかし漢字かな交じりのく ずし字だと、とたんに難易 度は跳ね上がります。 くずし字。漢字をもとに 発展した日本の文化です が、現代人にはほぼ読めま せん。たとえば「つ」のも とになった漢字は「川・徒 ・津」が挙げられます。川 を「つ」と読むのは古代中 国の発音がもとになってい るそうですが、現代の中国 語では「チュアン」と発音 します。もうそういうもの だと記憶していくしかあり ません。 明治時代にようやく一音 一字に統一され、私たちに 掛け軸のくずし字を 読んで世界を広げる よくわかる「くずし字」 見分け方のポイント なじみのある平仮名が用い られるようになりました が、このような経緯から基 になった漢字が異なる、現 代では用いられることのな い「変体仮名」で書かれた 古文書を、私たちが読むこ とができないのは当然のこ となのです。まったくの別 物なのですから。 だからこそ掛け軸や碑文 のくずし文字が読めたと き、過去の人びとの息づか いにふれることができるの ではないでしょうか。「何 か書いてある」だけの掛け 軸が、豊かな知識の世界を 広げる宝箱なら、この一冊 はそのカギになってくれる のかもしれません。 仕上げるからね」と聞かせて いただきます。 アインシュタイン博士は 「無限であるものは宇宙と人 間の愚かさ」と言いました。 浄土真宗の一門徒として受け 止めるなら「無限であるもの が2つあります。人間の愚か さと阿弥陀さまの願い」。私 の行いには限りがあり、阿弥 陀さまの願いは限りなく私を 救うはたらきをしてください ます。その「私」を救うとい う願いを建てられたきっかけ と、その成就された「救いの はたらき」を聞くことこそ が、「仏願の生起本末を聞 く」という浄土真宗の大切な 聴聞の姿なのでありました。 26 66 人間の愚かさと 阿弥陀さまの願い メイツ出版 齋藤均監修・山本明著 2,090円(税込) 小笠原 元 お がさ わら はじめ 愛知県 名古屋市吹上寺( ( ⑵ 2026(令和8)年8月5日 名 古 屋 西 別 院 (第195号)
RkJQdWJsaXNoZXIy NDY3NTA=